「耳が痛くなる話」

このサロンでは、研究や授業、日常生活などで気がついたちょっとした小ネタを紹介しまして、大学の先生ってこんなことを考えているんだなと、少しでも親しみを感じてもらえればと思います。 今回は、「耳が痛くなる話」。



 「勉強しなさい」という話ではないです。。。

 飛行機やエレベータに乗っていますと耳が痛くなることがありますよね。耳の中の気圧と外の空気の気圧との差によって鼓膜が引っ張られるからです。耳の中と外気は耳管と呼ばれる管によって圧力調整がなされますが、子供は大人に比べて太くて短いため耳が痛くなることはあまりないそうです。

 他にも乗り物で耳が痛くなることはありますよね。電車でトンネルに入ったときです。トンネルの上には大きな山がそびえているのでトンネルの中は気圧が高いのでしょうか?もし気圧が高いのだとしたらトンネルの入り口と出口から空気が漏れて外の気圧と同じ1気圧に落ち着くはずです。それに、自動車で高速道路のトンネルに入っても耳が痛くなるはずですが、そのような経験はありませんね。

 実は、トンネルの中に電車が突っ込んでいくと、トンネル内にあった空気が電車に押され逃げ場がなくなって車内に侵入、車内の気圧が上がるからなんです。新幹線の場合には窓側の壁が車内側に少し膨らんで(車体が潰れて)車内の気圧が上がります。自動車でトンネルに入ったときに耳が痛くならないのは、トンネルと自動車の間にある隙間が大きいため空気が逃げられるからなんですね。

 折角、解析をしたのならその解析に基づく予測(予言)を行う必要があります。予言する能力の無い理論はつじつま合わせみたいなものです。つまり、もし耳が痛くなる原因がトンネル内に電車が突っ込んだことによる空気の圧縮だとするならば、逆に、電車の後ろ側では電車が通り過ぎるため空気が膨張することによる気圧低下に伴う耳の痛さが発生しているはずです。実際に気圧計をもって新幹線に乗ったところ、確かに先頭では気圧が高くなり、後尾では気圧が低くなっていました。電車の中央は不安定で明確な変化はありませんでした。

文責:東海林



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