脳はこれまで神経細胞とシナプスから成る網で機能していると考えられてきました．しかし最近になって，脳機能を真に解明するには，神経網を支えるだけの存在と考えられていた「グリア細胞」の働きを調べなくてはならないことが分かってきました．本研究室では山梨大学医学部との共同研究で，このグリア細胞の働きを実験的，理論的に解明することを目標に研究を行っています．

実験研究としては，近接場光計測の手法でグリア細胞の構造を世界最高の分解能で観察することを目指しています．理論研究としては，近接場光構造と癌診断の研究において共同研究グループと共に養ってきた数学的方法をグリア細胞の観察データに適用し，脳機能発現の基本的なメカニズムや，脳障害の原因解明などを目指しています．

この研究は医学的な価値だけでなく，これまでのコンピュータとは全く異なるような，脳に近い機能を持つ新しい装置をつくるための基礎研究にもなると我々は考えています．研究分野の垣根を越えて，互いの知恵を持ち寄り議論し現象を解明していく過程で，想像していなかったようなブレイクスルーが生まれると期待しています．

（文責：内山）