応用物理学会の第83回秋季学術講演会が東北大学(仙台市)で開催され、修士課程2年の荒川君が口頭発表を行いました。フォトクロミック結晶中の自発的ナノ光異性化経路形成現象における履歴特性を上下ダブルプローブ走査型プローブで観察し報告したものです。
どんな研究か少し紹介します。
現在の発達した計算機を持ってしても解くことが難しい問題はたくさんあります。中でも、問題の設定自体が時々刻々と変化するような問題を解くことは大変ですが、日常の問題はそのような問題ばかりです。そんな難しい問題を人間を含む生物は巧みに解いているように見えます。その生物の働きを真似して、新しい計算システムを作るという発想があります。
さまざまなアプローチがありますが、人が完全には制御できない物理現象を使うことが鍵になります。人が制御出来ることであれば通常の計算機でも容易に再現できるでしょうから。
私たちは、光で色が変わるフォトクロミズムに注目し、フォトクロミック分子がきれいに整列したフォトクロミック結晶に、ナノサイズの光を加えると、光の通る道の枝分かれ構造を生む、とても複雑な物理現象が起こることを見出しました。作用させるナノサイズの光をイベントだと思えば、枝分かれ構造は記憶と見ることもできます。
光と物質の相互作用が生むこの物理現象は、光の可能性と、物質の可能性を掛け算できるので、とても魅力的です。
荒川君は、世界で類を見ない走査型プローブ顕微鏡を使い、結晶試料を2つのナノ探針で挟み込んで、複雑現象の発生とその場観察を行い、記憶の重ね書きや消去について履歴特性を解明しています。
詳しい内容については関係する下記preprintを御覧ください。