工学部先端材料理工学科の方は、3年次の後期から研究室インターンシップを実施するということになりました。その内容は研究室によって異なります。このページでは渡辺(勝)研究室で行うことの説明をします。 大学の理工系の研究室は理論系と実験系に分けられることがありますが、当研究室は実験が主の研究を行っています。インターンシップの実習としては、次の2つが中心と考えています。 (1)化学的手法によるナノ粒子試料の作成 当研究室では逆ミセル法でCdSやZnSのナノ粒子試料を作成しています。これは特に大がかりな装置は用いないでナノ粒子を合成できるので、先輩に教わり作成してみます。このナノ粒子はヘプタン溶液中に分散して存在します。直径は作成条件によって変化させますが、1.5〜5nm程度です。トップページにも置いた下の写真は、この溶液が紫外光で励起され、オレンジ色に発光している様子です。紫外光は容器の底から照射しています。紫外光がナノ粒子中の電子を励起し、その電子が基底状態に戻る際に光子を放出したものが発光として観測されます。光子のエネルギーはナノ粒子の材質(物質)や直径を変えることによって変えられます。逆ミセル法についてはこちらのページで少し説明しています。 (2)作成した試料の光スペクトル測定 この方法で作成したナノ粒子は有機溶媒中の逆ミセル内に分散して存在します。この液体試料の吸収スペクトルや発光スペクトルを測定し、既知のデータと比較することによって、ナノ粒子が意図したようにできているか確かめることができます。 吸収スペクトルについて少し説明します。材料はその性質にしたがって光を吸収したり透過したりします。さらに、どの程度吸収(あるいは透過)するかは、光の波長に依って変化します。吸収の強さの波長依存を測定したのがスペクトルです。ナノ粒子が分散した液体試料の吸収スペクトルを分析することによってナノ粒子の直径やその分布を推定できます。 ナノ粒子は発光材料としても注目されています。上記のように、ナノ粒子の発光はその中で電子の遷移が起こって光子を放出したものです。その光の波長はいくらか、その分布を測定したものが発光スペクトルです。発光スペクトルを分析することで、ナノ粒子でどのような遷移が起きているのか推測することができます。同時に発光材料としての有用性を確かめることにもなります。 一方、研究に着手するとエクセルなどのアプリケーションを使ってデータの整理や表計算、図の作成をすることが多いです。その準備として、C言語によるプログラミング、Igpr Proというアプリケーションや皆さんご存じのExcel を用いた計算やグラフ作成を行います。旧学科で以前に同様なことを行いました。その例は次の通りです。 (1)磁気双極子や円電流が作る磁場を計算し、その磁力線を描画する。 (2)少し複雑な運動の運動方程式や波動方程式などの微分方程式で、解析的には解くことができないものを数値計算して変位の時間変化や軌跡などをグラフ化する。 (3)2次元格子や3次元格子を移動する量子のエネルギー分布を計算する。 さらにシミュレーションを発展させて、2次元面に存在する量子ドットについてシュレディンガー方程式を変分法で数値計算し、その波動関数φを描いた例が次の図です。この描画にはIgor Proを使いました。 |